よくある質問

「複言語話者」と「バイリンガル」は違いますか?

「バイリンガル」の定義は議論される場によってさまざまです。

一般的に「バイリンガル」と言うと、「二言語をどちらも母語話者のようにあやつれる人」という意味で使われることが多いようです。このような人たちは、「複言語」の観点から言うと、「その人のことば」の中にほぼ同等のハイレベルな能力のある大きな言語レパートリーを二つ持っているということになります。ですから、「バイリンガル」と呼ばれる人も複言語の能力を持つ人だと言えます。

ところで、「バイリンガル」は、決して二人の「モノリンガル(単一言語をあやつれる人)」の足し算ではありません。どちらの言語も巧みにあやつれるように見えても、実際にはそれぞれの言語で話題や言語技能において得意不得意があるのが通常です。二つの言語のバランスも人によってさまざまです。そこで、「バイリンガル」は「日常生活で頻繁に使用する言語レパートリーを二つもっている人」ともう少し広く定義されることもあります。

一方「複言語話者」には、世間で一般的に言われる「理想的な『バイリンガル』」だけでなく、このような様々なタイプの「バイリンガル」も含まれています。

また、「バイリンガル」という表現は、三言語を使う「トライリンガル」、四言語を使う「クワドリンガル」などと区別して使われることが多いですが、「複言語話者」はそのような区別をしません。

「母国語」、「母語」、「第一言語」はどう違うのですか?

「母国語」は、その字のとおり当人が「母国」と考える国の言語のことです。「母語」と同一視されることもありますが、「母語」はどこかの「国」の言語である必要はありません。

また、「母語」と「第一言語」は「生まれて一番はじめに学んだ言語」という意味で使われることが多いようですが、それ以外の意味を持つこともあります。例えば、「第一言語」は、「生まれて最初に接触した言語」を指すこともあれば、複言語話者の人が「最も容易に使えると感じる言語」という意味で使うこともあります。また、「母語」は、これらの意味に加え、「最もよく使用している言語」や「自分のアイデンティティ形成に最も関わっている言語」などの意味で使われることもあります。

「母語」は、必ずしも言語能力が高い必要はないという考え方もあります。読み書きができなくても、自分自身が「母語」と感じることもあり、個人の意味付けによって何が母語かは異なってきます。

「出自語」とは何ですか?

ドイツ語のHerkunftsspracheの日本語への訳語で、移民背景のある子どもたちの「(自分を含む)家族の出自国のことば」を指します。

移民背景をもつ人の言語について語られるとき、住んでいる国の言語(現地語)と対をなすものとして使われる表現です。

「継承語」とは何ですか?

北米の言語学分野で使われ始めた heritage language という英語の日本語訳です。

住んでいる国の主要言語以外の言語のうち「自分の家族や祖先につながりのある言語」を指す際の代表的な呼称です。同じ英語でも、オーストラリアでは、この「自分の家族や祖先につながりのある言語」はcommunity language(コミュニティ言語)と呼ばれています。ドイツ語ではHerkunftssprache (出自語)という呼称があります。

「継承語」という表現には、「受け継がせる」「受け継ぐ」という価値観が伴いますが、昨今では子どもの目線から捉えて「ルーツ(言)語」と呼ばれることもあります。

「複言語(主義)」と「多言語(主義)」は違うのですか?

「複言語」も「多言語」もことばの数が多いことを表すという点は同じですが、「複言語」(plurilingual)は個々人のことばの状態に、「多言語」(multilingual)では社会全体のことばの状態に焦点が当てられています。 「多言語主義」というのは、複数の言語が社会で併存している状態を肯定的に捉える考え方です。例えば、学校の中で多数の言語の授業が行われていたり、駅などの標識が数か国語で書いてあったり、国連会議で多くの言語の同時通訳が行われているような状態が「多言語」の状態です。 「複言語」の「複」は数が多いことだけではなく、「複合」や「複雑」といったさまざまな意味を含んでいます。 (「複言語」の意味は、「「複言語・複文化」とは何ですか?」をご参照ください。)

「複言語・複文化主義」とは何ですか?

ヨーロッパの欧州評議会が推進している言語教育政策の背景にある理念です。

一人ひとりが複数の言語や文化を自分自身の中に取り入れ、状況や相手によって異なる言語を使い分けたりして、持っている知識やスキルを総動員してコミュニケーションをとろうとすることに焦点が当たっています。

つまり、個人の中にある複数の言語や文化や経験などが、相互に関連し合ったり、補い合ったりしながら一つの「その人のことば(の総体)」として存在しているという考え方です。

そして、一人ひとりがもつ、ありのままのことばを肯定的に捉え、他者にも同じようにその人にしかないことばがあることに気づき、お互いに尊重しあう姿勢を育むことも大切だとされています。また、少数言語であっても全ての言語に同等の価値があり、全ての人にいかなる言語も学ぶ権利があることが指摘されています。

このように、複言語・複文化主義のもとでは、ことばの学びを通して、自分とは異なるものを受け入れ、尊重する寛容な「姿勢」と、自分を含めたすべての人の中に存在する言語と文化の複数性を肯定的にとらえる「態度」を育むことが目指されています。

※欧州評議会とは、人権、民主主義、法の支配等の分野で活動している国際機関です。

「複言語ファミリー」とは何ですか?

複数の言語と文化が混ざり合う中で共に生きている家族のことを、このサイトでは「複言語ファミリー」と呼んでいます。

国際結婚家庭、親の出自文化が同じ家庭、単身家庭、多世代家庭など、「ファミリー」のあり方はさまざまです。

「複言語」とは何ですか?

「複言語」(plurilingual) とは、欧州評議会が提唱している価値観で、ひとりの人間の中に複数のことば(言語)が共存している状態を指します。

人は生きていく中で、さまざまな言語を自分の中に取り入れています。それらが互いに関連し合い、補い合いながら、混ざり合うことで「その人ならではのことば(の総体)」を作り出しているという考え方です。「複文化」(pluricultural) というときも、同じように考えることができます。

※欧州評議会とは、人権、民主主義、法の支配等の分野で活動している国際機関です。