複言語を生きよう

複言語を生きよう

ティーンズ座談会 ―ドイツと日本で生きる―part1

三輪壮舞 日下ハンナ ツムトーベル明日香 白井ヤン颯

2021年9月18日、ドイツのギムナジウム(Gymnasium, 主に大学への進学を希望する子どもたちが進学する中高一貫教育の学校)最終学年に在籍している17、18歳の複言語ティーンズ4人を招いて、オンライン座談会を開きました。自分の中のことばについて、日本や日本語への思い、日本語補習授業校(以下、補習校)での体験、独日の学校生活の違い、ドイツで日本ルーツを持ちながら暮らすことなど、色々なテーマについて語ってもらいました。それぞれが自己紹介をしたあと、まずは自分の中のことばについて話してもらうことから話は始まりました。

参加者プロフィール 

(発話の開始順)

三輪壮舞くん(そうま)

両親、日本出身。日本生まれ、ドイツ育ち。ハンブルク在住。中学まで補習校に通うが、今は日本語を話す機会は親とのみ。基本的に友だちとはドイツ語で話し、スラングなど英語が混ざることがよくある。スペイン語を10年生まで学ぶ。韓国語にも関心があって勉強を始めた。趣味は、絵を描くこととダンス。

 

日下ハンナさん(ハンナ)

母、日本出身。父、韓国出身。米国生まれ。4歳の時に来独。母とベルリンに暮らし、今も補習校に通っている。母とは日本語。父とは韓国語とドイツ語が混ざった英語が中心。母のパートナーがいる場では、ドイツ語、英語、日本語を混ぜて会話。友だちとはドイツ語。1年間イギリスに留学。目標は、30歳になるまでに中国語、ロシア語、フランス語、スペイン語を勉強すること。

 

ツムトーベル明日香さん(あすか)

母、日本出身。父、ドイツ出身。ドイツ生まれ。母も含め家族や友だちとはいつもドイツ語。今は日本語は習っていないが、「もう一回ちゃんと習いたい」と思っている。他には、スペイン語、フランス語、英語を学習中。趣味はテニスとバイオリン。

 

 

白井ヤン颯くん(はやと)

母、日本出身。父、ドイツ出身。ドイツ生まれ。母とは日本語、父と弟とはドイツ語。両親間は母が日本語で話し、父がドイツ語で答えている。週に1回、補習校に通うが、そこの友だちともドイツ語中心。日本の高校に留学経験あり。フランス語も英語も学校でやったが、ドイツ語と日本語以外にはあまり関心がない。趣味はピアノとテニス。

 

 

■進行役/バウワーゆかり(ゆかり)

両親(日本)。母がドイツ出身者と再婚。9歳まで日本でインターナショナルスクールに通い、その後13歳まで中国上海に滞在、現地校に通う。13歳から17歳までドイツのバイエルンでRealschuleに通う。現在、30代。プライベートは日本語が多いが、仕事ではドイツ語と英語も使っている。

 

 

「自分の中にあることば」

ゆかり:今、ハンナちゃんは(自己紹介の中で)韓国語とか英語とかの話をしてくれたけど、他のみんなは、日本語とドイツ語以外にどんな言葉がありますか?例えば、さっき私が(自己紹介の中で)言ったドイツ語はバイエリッシュ(編集者注:バイエルン方言)なんだよね。そういうのも含めてもいいです。(笑) 他にも、学校でこんな言語をやったとか。みんなの中にどんな言葉がありますか?

そうま:友だちとドイツ語で話してる時に、英語をまぜるとか、まぁスラングでも、いろんな言葉を混ぜたりするのはよくあるので、ドイツ語と英語が混ざることは、あの、あると思いますね。

ゆかり:それ以外にも、話す言語は?

そうま:方言とか、僕は、日本語も標準語しか話さないので。ドイツ語も訛りがないので。(笑)スペイン語も、Oberstufe (編集者注:ギムナジウム最終の2学年、11・12年生)で選択肢がなくて、まあ10年生でやめるしかなかったので、あんま、もう頭にないですね。

ゆかり:そうまくんは、どの言語を使ってる時が一番心地いいですか?

そうま:場合によると思いますけど、一番自分の言いたいことが言えるのが、ドイツ語と英語かな。日本語は、あの、単語量がドイツ語とかより少ないので。何かを説明したい時とか、止まってしまうことが多い。

ゆかり:ハンナちゃんはどうですか ?

ハンナ:私は、5年生からラテン語をやってて…。留学して帰って来てまたやろうと思ったんですけど、ほぼ忘れてたので、ちょっと諦めて。フランス語も2年間やってたんですけど、それもまた留学したせいで結構忘れたので、そこで諦めました。

ゆかり:すごいね。いくつ言葉を習ったことがあるの、ハンナちゃんは?

ハンナ:・・・(数えている)6つですかね?

ゆかり:6つ!?すごいね。一番話しやすい言葉って、ありますか?

ハンナ:えっと、日本語とドイツ語、どっちも場所とか場面によって心地いいなって思う時があって。例えば、プレゼンテーションとかをやる時は、個人的には、なんか、日本語の方が自信あります。日本語でやった方が、こう、安心感を持ってしまうんですよね。なので、ドイツ語でプレゼンテーションをやる時の方が緊張してて。日本語でやってたら、全然緊張してない感じ。でも、日常会話をする時は、なんか、ドイツ語の方が心地がいい。なんか不思議なんですよね。

そうま:僕は日本語でプレゼンしたことないから、多分全然ダメだと思う。(笑)

ゆかり:じゃあ、あすかちゃん、どうですか?自分の中の他の言語。

あすか:私はフランス語とスペイン語と英語を学校で習っています。スペイン語は友達とかと使ってないけど、フランスに友達があるから、ちょっとフランス語、喋っています。でも、普通は、ドイツ語だけ喋って、英語は、メッセージを書く時に使ってるから、その二つは私にとって楽です。

はやと:僕は、はっきり言って、ドイツ語と日本語以外はあんまり興味がなくて。10年生までフランス語をやってたんだけど、全然楽しくなくて。(笑) で、英語もあんまり得意じゃないんで。ドイツ語と日本語の二つだけって感じです。

ゆかり:その中でもどっちを話してる方が心地良いとか、ある?

はやと:ドイツ語の方がやっぱり、ボキャブラリーが多いんで、そっちの方が簡単だけど、まぁ、でもたまには日本語を話すと、すごい楽しいなと思ったり。まあ、両方ともいい感じ。日本語も結構自然な…、感覚?話してて楽しいって感じ。なんでかな。多分初めて話せた言語が日本語なので。うん、そんな感じです。(笑)

ゆかり:なるほど。

 

「日本語とわたし」

ゆかり:みんな、日本語は生まれたときから?

あすか:私は生まれた頃から、お母さんと日本語を喋ったけど、まぁ、その後からちょっと難しかった。公文でちょっと習ったけど、そんなに時間がなくて。あの、そんなによくしゃべ…しゃべれない!(笑) ちょっと残念。

ゆかり:やっぱりでも、こっちの学校、忙しくなっちゃうもんね。他のみんなはどうですか?

ハンナ:私も生まれた頃から。補習校に通いだしたのが小1。でも、あの、おばあちゃんとおじいちゃんに、なんか、育てられたような感じなので、小さい頃は。親が忙しくて。なので、そのせいもあって、すごい日本語をたくさん教えてもらったっていうのもあります。

ゆかり:あ、おじいちゃんおばあちゃんに教えてもらったっていう記憶があるんだね。

ハンナ:そうですね。あと、友達とか。日本語がすごい上手な友達が周りにいて、その子達と喋ってるうちに、なんか、発音がすごい良くなったってよく言われます。

ゆかり:確かに。発音はそんな違和感ないもんね。そうまくんは?

そうま:僕も日本語は生まれた頃から。でも補習校になって、ひたすら作文とか漢字ドリルはやらなきゃダメだったの覚えてます。(笑) それで、読み書きとかやって…今は、特に書くのはだいぶ難しくなってきました。

ゆかり:そっか。でも、普通に日本にいる日本人も漢字が書けなかったりするからね。(笑)じゃ、はやとくんは?

はやと:僕も生まれてから。補習校に通い始めたのは、小学1年生。その前も、なんか日本語を学べる幼稚園みたいなのに通っていて。僕も漢字が一番の弱点です。

ゆかり:(笑)漢字はねえ、ましてや今(キーボードで)打つから、選べても書けないよね。

そうま:ほぼ感覚。(笑)

 

「これからやってみたいことば」

ゆかり:じゃあ、これからやってみたい言葉はある?

はやと:やってみたい言葉はないです。(笑) 勉強したくないです。(笑)

そうま:僕は長続きがあまりしなくって。一時期、韓国語面白そうだなと思ったんですけど、結局ほぼ何も残らなくて。(笑)やめてしまった。

ゆかり:韓国語をやろうと思ったきっかけって?

そうま:それは、やっぱり音楽とかはやってるので。

ゆかり:なるほどね。あとのみんなはどうですか?

ハンナ:中国語、やってみたいです。英語の次に大事って言われてるじゃないですか。なので、中国語と、またフランス語も勉強したくて。すごい言語が好きなので。(笑)目標としては、あの、自分の中で、30歳になるまで、中国語とロシア語フランス語とスペイン語を勉強してみたいなって気持ちがすごくあります。旅行が好きなので、現地に行った時に英語を話すのがすごい申し訳なくていつも。なので、なるべく、その土地の言語を話せる形で行きたいなっていつも思ってて。

ゆかり:すごい、ハンナちゃん。それ、実現したら、世界中どこにいっても大体通じるかも!あすかちゃん、どうですか?

あすか:あの、私はもう結構です。(笑) たくさん習ってるから。(笑)でも、韓国語はとっても好きです。

 

外見やバックグラウンドで判断された経験」

ゆかり:みんなは、今まで外見とか、バックグラウンドが違うとかで、周りに判断されて嫌だなって思った事とかってありますか ?

はやと:やっぱり、ドイツでもアジア人として認識されてるなって思って。グループ分けみたいな。こいつはアジア人だから、とか。日本では逆にすごいドイツ人だなって。日本に留学行った時、100%ドイツ人と思われるときもあって。だから、なんかどっちにも居場所がないっていう状態があるなと思いました。

そうま:ハーフ独特のやつだと思う。白人とか黒人とか日本のハーフって、よく聞くけど、どっちにも100%…ええと、属さないっていうのが。僕はそういうのがあんまりなくって。(笑)だから面白い。僕は、日本に行けば、多分どこからどう見ても、日本人なので。でも基本的にアジア人なので、こっち(ドイツ)にも属さない気分。

あすか:私はドイツ人に見えるから、日本に行ったら、いっぱいコメントがあった気がする。学校に行ったら、みんなが「可愛い」っていっぱい言うのがあって、ちょっとおかしかったけど。ドイツでは、もう(母が日本人だと)聞いた後からなんかいっぱい質問が来るけど。でも、悪いコメントもあった。

ゆかり:例えばどんな?

あすか:私のクラスに一人男の子がいて、その…Walfangenって日本語でどう言うの?

ハンナ:クジラ狩り ?

あすか:そのトピックのレッスンの途中、先生がそのクジラのテーマを話していたばかりで、その子がなんか嫌なものを言った。それだけ。嫌なこと、日本語で言えないこと、ドイツ語とか英語でも言いたくない言葉。

ゆかり:それは、あすかちゃんのバックグラウンドに日本人が入ってるから、そういうことを言われたっていう経験なんだね。ハンナちゃん、どうですか?

ハンナ:私は、外見は日本人なので、こっちではもう色んな嫌なことは経験したんですけど、正直言って慣れちゃうんですよね。知らない人に何か言われるとか、もうだんだん慣れて一緒になって笑えるようになったんですけど、小さい頃は慣れてなかったので、結構、傷ついたっていうのもあって。イギリスに留学した時も、中国人が多かったので、「あなたも中国人ね、そっち行きなさい」みたいな感じ。それに対して、「私はドイツからきたし、中国語できないから、そのグループに入りたくない」って言わないといけなかったのが、すごい大変だったの覚えてます。コロナなってからは、中国人に見えるらしくてコメントとかされたと思うんですけど、正直言って、慣れてしまったので「ま、いっか」なみたいな。でも日本に行った時は逆に性格は日本人じゃないとか、にじみ出てる、ってよく言われます。「あなた、帰国子女でしょ」って全く知らないおばさんにも言われて、「なんで分かったんですか」って聞いたら、まず洋服とか動作とか、もう全てが日本人じゃないって言われて。ちょっとショックでした。

ゆかり:ショックだったんだ。

ハンナ:「日本人じゃないの?」みたいな。なので、何か私も一応外見は日本人なんですけど、日本にいてもドイツに行っても、ちょっと居心地が悪いってのはあります。やっぱ補習校が一番居心地がいい、よかったってのはあります。

 

「補習校について」

ゆかり:補習校に今も通っているのは、ハンナちゃんとはやとくん、だよね?行ってて楽しいなって感じますか?

はやと:はい、すごい楽しいです。僕は、あの、やっぱり、友達も共通の話題とか、何かすごい似ている存在というか。理解できる存在って、すごい友達と遊ぶのも楽しいし、授業も楽しくて、すごい楽しいです。

ハンナ:私は、今オンラインなので正直言って、ちょっとつまんないんです。なんか教科書を読んで、なんか、それについて喋るだけ、って言う感じなので一方的な感じで…。通ってた時は、すごく楽しかったのを覚えてます。今もう高3なので、できたら最後の1ヵ月だけでも行けたらなーってちょっと思ってるんですけど。無理そうなので、ちょっとがっかりしています。教室、みんなで喋るって言うのがすごい好きだったので。外で合宿とか運動会とか、やっぱ全部キャンセルになってしまったので。それがちょっと残念だなぁって。

ゆかり:そうまくんは?行ってたころ、楽しかった?大変だった?

そうま:僕は、毎週行って楽しかった記憶がたくさんあって。いろんなお祭りとかもして、みんなで楽しくワイワイしてたので。結構友達と会うために補習校に行ってたっていうのが多分本当の意見で。いろいろ時間がなくなったのでやめちゃったんですけど。

ゆかり:良い思い出なんだね。あすかちゃんは?

あすか:私は行ったことない。日本語は、おうちで習って、うーん、お母さんの知り合いの子どもたちと、キャンプみたいなのをやったけど、ちゃんと学校に行ってません。

ゆかり:今、みんなの話を聞いてて行ってみたいなって思いますか?

あすか:うらやましい。

はやと、ネットから落ちる)

ゆかり:はやとくんがいなくなっちゃったね(笑)続けながら、待ってみましょう。


このあと、話は日本での体験入学で感じたことへ。次回をお楽しみに!

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